まず、今回の希望前進大会のスピーカーとして招請して下さった韓鶴子総裁と天宙平和連合に深い感謝の意を表します。天宙平和連合の活動に参加することは私にとって常に大きな喜びです。以前は、大韓民国のソウルを訪問し、スピーチをしたことがありますが、今回はオフラインでの参加が難しく、オンラインでこうして集まることとなりましたが、依然と同様に私たち皆が共にあるように感じられます。
今日、私たちは興味深く、またとても難しい時期に生きています。今日の世界の秩序は「不確実性」であると定義することができます。新型コロナウイルスのパンデミックは、経済の停滞、失業率の上昇、未来の世代への大きな負担となる国家負債だけでなく、武力衝突と新たな武力紛争の可能性等、世界各地で緊張状態が高まりつつあります。それ以外にも、気候変動のように、家庭と地球の生存を脅かす恒久的な課題も存在します。
問題は、こうした課題にどのように対応するかです。私は、過去のどの時代よりも、核心、根本となる価値観に集中することが重要であると考えます。それは、平和、自由、そして人類の尊厳のような価値観です。
2012年に私が欧州委員会を代表して、オスロで行われたノーベル平和賞の授賞式に参加してスピーチをしたときに、私は家庭から始まり、社会の各界各層が追求する価値観と平和との緊密な関係について強調しました。家庭は全ての国家と共同体の礎であるだけでなく、国際社会と世界共同体の礎でもあります。ですので、私たちは多国間主義を支持するべきであり、新しい国際協力の在り方を模索しなくてはなりません。人類の公共利益の実現は、私たちが共に協力しあってこそ可能となるからです。
まず、平和と安全保障が代表的な公益でありますが、気候変動及び世界的なパンデミックとの対峙、経済的安定、自由で平等な貿易、開かれた投資環境を追求する努力も公益に含まれます。人間とアイデアの自由な移動と循環もこれに含まれます。こうした全ての公益の実現のために、多国間主義と国際協力に対する新たなコミットメントが必要とされています。
これから、私たちは今日の世界を掌握している悲観主義と関係する困難を克服してゆかなければなりません。今、世界は恐怖の中で震えています。ですが、恐怖は良い決定の基盤になることはできません。今日の人々の対話や発言に耳を傾けてみたときに、頻繁に「危機」という単語が登場することに気付きます。経済危機、危機の年、難民危機、などがその例です。また、「脅威」、気候変化の脅威、パンデミックの脅威、そして「終末」、生命の終末、地球の終末という言葉も頻繁に耳にします。
このような単語の使用に表される悲観的な雰囲気は、大半は思想の公論の場に起因しています。今日、人々の対話において合理的で賢明な意見は市場性が弱く、大衆の談論の場において十分な支持を受けることができずにいます。ですので、最近、中道の立場から礼儀正しく、バランスの取れた意見を披露するということは、私たちの立場に同意しないわけではなくても、攻撃的で、威嚇的で、時には憎悪に満ちた今日のソーシャルメディアの環境においては、とることは難しい態度なのです。
私は、最終的には勇気が恐怖に打ち勝つと信じています。そして私は、私たちが今日の国際社会において、礼儀正しく、親切に、勇気を代弁して恐怖に打ち勝つことが出来ると信じています。私は世界を一つの社会、一つの家庭であると考えているからです。時に、家庭内でも問題が起きることがあります。ですので、人類一家族という、全ての不和を乗り越えることができる崇高な目標があるということを理解しなければなりません。
今日、世界的な対立傾向やそうした趨勢がある状況において、これはあまりにも重要な内容です。その傾向は流通と葛藤です。一方にはアイデア、人間、貿易、開かれた疎通の絶えることのない流通がありますが、一方ではナショナリズム、利己主義、外国人嫌悪による葛藤が常に発生しています。どちらが勝利するでしょうか？開かれた流通を支持する側、あるいは、葛藤をもたらす側。それは、私たちの決定次第です。
もちろん、私たちは自国を愛する愛国者たちです。国家は一つの共同体、一つの家族であり、家庭に対する愛を共同体の愛として、そして、国を愛する心の表れであると見ることができます。問題は自分の国が他の国よりもより優れていると考える過激主義です。ですので、国家主権を強調するよりも、私たちは各個々人の尊厳についてまず考えなくてはなりません。全ての人々は自らの潜在的能力、あるいは夢を実現することができる最高の自由を享受できなければなりません。結局は一人一人の幸福が重要なのです。ですので、希望は恐怖よりも強いので、私は希望によって恐怖に打ち勝つことが出来ると考えるのです。
ご清聴ありがとうございました。
